木を見て森林を見る…長文


[ コメント ] [ 歯の診察室へ ]

投稿者 長谷川千尋 日時 2001 年 7 月 30 日 02:27:56

回答先: 不安ですぅ。。 投稿者 かえで 日時 2001 年 7 月 24 日 15:01:56

 なかなか正鵠を射た質問です。
木を見て森を見ずとか、専門馬鹿とか、そういうことは良くない…とは最近は比較的よく話題になります。
 しかし、医学の情報量は膨大ですから、やはり科ごとに分かれることはある程度必要でしょう。
 しかしやはり、分化しすぎたことでの弊害はあると思います。
 
 このことを考える場合、病気の診断が付いた後のこととと、その前のことがあります。診断が付いた後については最近は比較的いろいろな科の連携が取られることもあります。
 例えば摂食嚥下という分野があります。様々な疾患で食事がしにくくなった場合の治療・ケアについての分野ですが、リハビリテーション科が主体とは思いいますが、外科、形成外科、脳神経外科、耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、歯科、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、栄養士、看護婦(士)、歯科衛生士などが関係します。

 必ずしも、自身の科の中だけで診療をしているばかりではありません。

 普段の診療室の中だけでも、他の疾患を持った方の治療はよくあることですから、必ずしも歯だけみて治療に当たっているばかりではありません。

 しかし、それでも不十分だとは思っています。
 病気の診断が付いた後より、その前の部分で、むしろ森を見る必要が大きいと思います。質問の内容もそちらのことかな?と思います。

 2〜3年前より、厚生省(当時)から、はじめて歯科疾患から他の身体の部位との関係を研究調査する予算が組まれました。漸くというべきところです。
 歯周病と妊娠、糖尿病、骨粗鬆症との関連については研究がされつつあります。

 大学などの研究室は細分化しすぎて、よく言われるように噛み合わせと全身との関係などは、日々臨床に従事する開業医から主に言われるようになりました。開業医の方が森を見ていることが多い…でも一部ですが…と思います。
 噛み合わせのことについては、それぞれの歯科医が経験からいろいろな説を唱えていることが多く、なかなか統一した方法などがないことが現状です。
 確立したことでないので、健康保険の対象にならないこともしばしばです。

 また、金属を多く使う歯科では、金属アレルギーについても重要な分野です。

 歯科以外の診療科目は、すべて同じ医学部で、どうして歯科だけ独立しているのか、それは、最初から金属などの人工物を利用して身体を補うというということが治療となる特殊な点からだと言われています。

 医科でも近世まで西洋では、医師とは内科のことを指したそうです。 
 テレビで格好良く取り上げられるのはだいたい外科医ですが、切ったり貼ったりすることは下賤な人が行うことだったのです。医師が自ら身体を切り刻むようになったのはずっと後世のことだそうです。
 このあたりは、ちょっと年代まで記憶にないので、調べないといけませんが、医学というのも一様に合理的に発展したのでもないのです。

 歯科は特に香具師(やし)の流れもありました。歯抜き士などが市中にいて、歯が痛むと抜いてもらったそうです。
 良くて床屋さんです。外科をしていたのも床屋さんで、床屋さんの青と赤のくるくる回るものは静脈と動脈の血管を表すのです。

 今の歯科学はアメリカで発達したものです。世界中で大体同じ流れですが、国により多少違います。医学は戦前はドイツなどヨーロッパの方が発達していましたが、歯科学だけはアメリカの方が優れていたのです。医療という科学としてよりは実学としてです。
 アメリカが世界の冠たる国になり、どの国でも同じ方式になってきました。
 
 戦前まで日本では歯科大学はなく専門学校だったのです。薬学部さえ、大学があったのに、です。フランスは比較的最近まで(記憶が定かではないのですが)歯科医は医師の監督の下に試験を行われ、独立した存在ではありませんでした。

 日本では江戸時代、市中の入歯師歯抜き師とは別に口中医という医者がいました。口を中心に全身を診る医者は最も上級の医師中の医師だったらしいです。
 明治になり、江戸のものはすべて否定され、鍼灸や漢方医は正式な医療者ではなくなってしまいました。西洋医学のみとなった中で、医学はドイツでしたが歯科はアメリカから取りいれられました。医師として開業するより「歯科医(?)師」として開業した方が小金が貯められたので、医業開業試験に合格しても歯科を行う者も少なくなかったそうです。
 
 そんな中で、実学の歯科学ではなく、医学とししての口腔科の医科大学の設立に努力した人もあったようですが、残念ながら頓挫してしまいました。
 しかし、高度成長期に虫歯の洪水があった時期を考えると、実学の歯科学があったおかげで今、虫歯が大きく減ってきた…という良い現状が出てきたのかも知れません。地位の高い口腔科医がいて、日本やアメリカのような歯科医が余りいなかったオーストリアでは、虫歯に悩む患者さんが多く、最近漸くアメリカ式歯科学を取りいれた…という話も聞きます。
 今や、虫歯は大きく減り出し、医師より早く私たちは過剰時代を迎えました。それと共に、顎関節症や歯列不正の増加、歯や口腔と関連する様々な症状への対応など、問題は複雑化しています。
 個人的には、歯科医でなく口腔科医への脱皮が必要と考えます。

 しかし、一旦存在が固まってしまうと、なかなかそれを改革することは困難です。
問題があるのでは?と思っても、長々書いたような今に至る歴史があるのです。

 構造改革するのはなかなか大変なのです。
 
 一人一人の歯科医が森を見るように努力しても、難しいことも多くあります。

 ただ、アメリカより日本の歯科医の方が、同じ歯科医でもその資格で多くのことが出来ます。日本では口腔外科は歯科医の資格で出来ます。歯科口腔外科という標榜名は自らの仲間の分野を侵されたくない医師会との妥協案で付いた名で、歯科
と名があっても病院の歯科口腔外科医は、歯を削ることはほとんど無く切ったりはったりのことをしている場合もあります。
 アメリカでは歯科も日本より細分化されており、日本では一人の歯科医師がすべて行うことでも、歯内療法科医、補綴歯科医、歯周病科医…と回らないといけないこともあります。口腔外科医は歯科医が医師の資格を更に取得してから行います。

 アメリカからは、審美だとか、ハードレーザーだとか、そういう技術は今も入ってきますが、噛み合わせの治療だとか、全身との関わりのような情報はほとんど聞かれません。
 木を見て森を見ずの日本の歯科医も、小さい林くらいは今までも見ていたかも知れません。
 歯科東洋医学会という学会があります。その名の通り本来は鍼灸漢方など中国医学の歯科への応用についての学会ですが、実際は代替医療など様々な医療の取り入れについての発表があります。
 ここでは、木を見て森を見ずにならないように、すべての会員が思っていることです。全身咬合学会と言うところもあります。

 他方、日本代替相補伝統医療連合会議という会が旗揚げされました。西洋医学のみならず、中医学、アーユルベーダ(インド)、チベット医学、イスラム医学、民間療法、カイロプラクティック、オステオパシー、健康食品、その他様々な分野を統合して考えようという学会です。医歯薬のみならず、日本では正式な資格になっていない療術も含めて考えようとしています。
 もっと以前より、同様な趣旨のホリステイック医学協会と言うところもあります。
 バイデジタルOリングテストという、ニューヨーク在住の日本人が考案した診療技術もあります。これも、森を見る技術です。

 ヒトゲノム…が注目されています。再生医療、遺伝子治療として大変重要でしょうが、一方で身体のますますの部品化…になるのではないか?という危惧もあります。
 本当の森を見ることとは、患者側…というか、医師、医療者任せにせず、誰もが自ら健康に注意を払うことが大切と考えます。
 健康保険財政が大変なのは、医療機関の不正請求をなくせば改善するというものではありません。今の世の中、皆、不摂生をしています。もっと健康を考えれば医療費は減るのです。
 たばこが医療費を増大させているのは明らかです。これを抹殺すれば、病気の人は減ります。いくら安いからと言って、肉食傾向は絶対に健康を阻害します。戦前の日本人の食事が最も健康によいとされています。

 戦後日本人の体格が良くなったのは食事の西洋化と言われますが、そうとばかりは言えません。昭和初期は戦争ばかりで食料が必ずしも足りていなかったせいで、大正期までどんどん体格は良くなっていたのに昭和初期にがくんと悪くなったのです。がくんと体格が悪くなった時期と戦後を比べてはまさに森を見ていないと言えます。 
 歯は前歯2犬歯1臼歯4の割合です。科学的証明が出来ませんが、野菜2肉魚1穀類4の割合で食べるのが良い…と言う説が私は好きです。

 100グラムの獣肉を生産するにはその7倍か、10倍の穀物がいるそうです。日本では少子化少子化と騒いでいますが、地球規模ではまだまだ人口爆発の心配があります。限られた食料で増加した人口を養うには、効率よい食料の配分が必要です。肉を沢山食べたい…という欲求は一方で餓死する人々を増やしてしまうことになり、エゴなのです。エゴがはびこれば病気は増えます。

 話が飛んでいるようですが、皆が皆大きな視点で物事を見ることが強いては自らの健康をもっと考えることに繋がると思います。

 この掲示板でよく話題にしている、口呼吸を止め、十分な睡眠をとり、左右均等によく噛み、寝相を正し、冷たいものを取り過ぎず…ということを行うと、様々な疾患が治るそうです。東大医学部でアウトローと呼ばれながら、画期的な研究・発明をされている口腔科医(資格は歯科医)がいらっしゃいます。
  脊椎動物が進化して哺乳類から人類になった進化の過程を踏まえ、現代のヒト特に日本人の身体の使い方の誤りを指摘されています。
 今まで分からなかった、病気の本質も捕らえています。
 脊椎動物先祖は全身が口のホヤの仲間で、口から脳や身体のいろいろな部分が分化していった…それが今のヒトにもずっと受け継がれており、口の改善が全身の改善に繋がると言われています。
 
 虫歯を詰めているだけでは(それも結構難しいことだが)、木の一部の枝葉を見ているに過ぎません。
 虫歯の洪水の時期は、毎日山のように患者さんが来て、森を見る余裕など無かったと思います。過剰時代の今こそ、森のみならず、森林を見る素地が出来ている、と考えます。


コメント:

[ コメント ] [ 歯の診察室へ ]